ニャン公学校へ行く


ニャン公学校へ行く







ニャン公はトラ猫である。
ニャン公は自分の名前に不満を持っている。
ニャン公なんてかっこ悪い名前だと思っている。
友達のピエールやらルドルフみたいなカッコイイ名前がよかった。
カッコイイ名前がよいと思うのだから、ニャン公はオスであった。
そんなかっこ悪い名前を付けた親に怒られたので、明日は学校へ行かねばならない。
明日は鳥を捕まえようと思っていたのに。
しかし怒られたのならばしょうがない。
そういうものだ。明日は学校へ行こう。


朝ご飯に魚を獲って、学校へ向かう。
学校なんてものは、どうして出来たのだろうか。
道すがらそんな疑問が浮かんだ。
猫は単独行動を好む。
他の猫の都合に合わせるのが嫌いだからだ。
寝たい時に寝て、食べたい時に食べて、時々縄張りを見回って。
原始時代の猫はそんな暮らしをしていたと聞く。
その習性は今でもあまり変わっていないだろう。
学校だって1ヶ月に1回出席すればそれでいいのだ。
学校なんてどうして出来たのだろう。
疑問は更に膨らんだが、ニャン公は考えるのが苦手であった。
ピエールとルドルフの姿を見つけると、あっさりと考えるのを止め、二匹の元へ駆けていった。


学校は面倒臭いものである。
鳥の獲り方、魚の獲り方。
そういうものを学ぶ。
ニャン公は退屈していた。
そんなものはとっくの昔に親から教わったし、元々上手かった。
しかしネズミ獲りはどうしても上手くいかない。
だから先生はニャン公にネズミ獲りを教える。
上手くいかないものほどつまらないものはない。
ニャン公は短気だった。
どうせ魚や鳥が獲れるのだ。
ネズミが獲れなくても何の苦労もしない。
先生にそう文句を言ってやる。
先生は決まってこう言う。
隣の犬達が攻めて来て、鳥や魚を獲り尽くしてしまったらどうする。ネズミを獲れないお前は飢え死にするぞ。さあ頑張ってネズミを獲れる様になれ。
退屈。



隣の国には犬達が住んでいる。
遠い昔、人間が滅んでしまった時に犬達はおおいに悲しんだ。
そして猫達に「一緒に生きよう」そう言ってきた。
冗談ではなかった。
やっと自分達を束縛するものが居なくなのに。
生きているだけで迷惑がられ、殺される事に脅える必要も無くなったのに。
犬は群れる。
それは猫にとって苦痛以外の何物でもなかった。
何匹かの猫は犬について行ったが、何かと連帯行動を強要される事が嫌で、結局猫達の元へ戻っていった。
猫と犬は仲が悪い。
もうすぐ戦争が起こると言われ続けているのだった。



私今、発情してるの。
女教師にそう言われた。
ぼく子猫ですから。
そう言って断った。
意気地のない男ねぇ。
呆れたようにそう呟き、先生は去っていった。
ニャン公はため息をついた。
何故まだ五ヶ月の自分が交尾に誘われなきゃならんのか。
それも大切な昼寝の時間に無理矢理起こされて、だ。
ニャン公はメスがあまり好きではなかった。
そもそもメスが発情してからオスが発情するという事自体が気に入らない。
メス猫を巡って喧嘩をするのも気に食わない。
そんなに苦労してまで子供を作らなければならないなんて。
自分は絶対に子供を作らない。
ニャン公はそう心に決めていた。
欠伸をし、またむにゃむにゃと夢の世界に旅立った。
ニャン公の家は母子家庭である。
父猫は交尾をしたらどこかに行ってしまったと聞く。
大して珍しい事ではない。
ニャン公は少しだけマザーコンプレックスである。
母猫以外にいい猫などいない。
そんな気持ちがある事にニャン公は気付いていない。



起きると夜であった。
猫は夜行性であるが、ニャン公は家に帰った。
今日は疲れた。学校は疲れるだけだ。
家に帰ると母猫は居なかった。
どこかのオス猫と逢引しているのかもしれない。
弟や妹が生まれるのもそう遠くないのかもしれない。
毛玉を吐いて、眠りについた。


明日こそは鳥を獲ろう。
そう心に誓って。



戻ろ