長い息を吐き、高まる鼓動をどうにかして抑えようとした。
腕が震える。
この手で人を殺す。今頃になって、ようやくその事を自覚する。
怖い。
この身を満たすのは恐怖。それだけだ。
だが同時に、例えようのない喜びを感じてもいた。
やっぱり僕はどこかおかしい。
思い、自嘲する。
狂っている。狂気の炎が燃え上がる。
そうであるのなら、このまま進んで行こう。
どこまでも狂ってやろう。
「大丈夫か?」
不意にモニターにセインの顔が映し出された。
「大丈夫」
無理に笑い、答える。
声が震えてはいないだろうか。
「いいか、絶対に無理はするなよ」
「うん、分かってるよ」
そう言いきる彼の姿を、セインは複雑な表情で見つめていた。
彼は白い少年だった。
髪、肌、どれもが色素を感じさせぬ程白い。
そして、瞳までもが。
異常だった。
それは彼の思う通り、いやそれ以上に狂った容貌。
しかしそれ故に人を惹きつける。
「……準備できたよ」
今度は違うモニターからヴェースが顔を覗かせる。
ヴェースは、彼と同じ顔をしていた。
だが白くはなく、その肌は健康的な色をしていたし、髪も綺麗な栗色をしていた。
対象的な存在。
「分かった。じゃあ、行くから」
「……ああ」
白の少年は、自分と同じ顔をした分身が嫌いだった。
どうしてお前だけが。
答えはいつもあの日に辿り着く。
12年前のあの日。
あの日から全てが変わっていった。狂っていった。






格納庫から、人類が作り上げた最高の兵器の一体が飛んでいく。
奪ってやる。
彼は思う。
あの日、自分の運命を狂わせたこの機体で。
「敵、居たよ」
ヴェースが告げる。
それは肉眼では確認できないほど遠い場所に居た。
彼の乗った機体は長距離戦専用の機体だった。
標準を合わせ、ミサイルを放つ。
あっけないほど簡単に敵機は墜落した。
「!!ヤバい!!気付かれた!!」
少年は死に逝く運命にあった。
それは逃れられない。まさしく運命。
「エイム!!逃げて!!」
エイムと呼ばれた少年はしかし、口元を歪めていた。
――――笑っている。
エイムは死ぬ事を恐れていなかった。
生きる事に何の意味があるのか見出せなかった。
それでも最初は苦痛に身悶えながらも、生に執着していた。
死ぬ事が怖かった。恐ろしかった。
「エイム!!」
銃口を敵に向ける。
馬鹿馬鹿しい程の数の機体が、彼に向かってくる。
これら全ての機体が、たった一機のヴェイルと呼ばれる機体に殺到する。
それでも、
「勝てないよ」
エイムは笑っていた。






終わった。
全てが終わった。
そしてエイムは未だ世界に存在していた。
ヴェースは薄ら寒いものを感じていた。
例えヴェイルの機体性能が一般の機体よりも勝っていたとしても、それはパイロットの腕がよほど良くなければ意味はない。
もしかして、エイムは……。
そう思った時、エイムがぽつりと呟いた。
「あーあ……」
空は夕闇に支配されようとしていた。
「残っちゃった」





あとがき


ロッボトです。分かりにくいですがロボットなのです。スパロボやると書きたくなるんだよう。
解説しますと、実はこれ大昔に考えてたロボモノのキャラの話なんです。
そっちは女の子が主人公でもちっと軽いノリなんですが。エイムももっとお馬鹿。
それはそのうち書き出すかもしれません。
そんなわけでこれだけ読むと意味不明ですが、ご容赦下さい。


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