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泣かれるなんて、思ってもみなかった。 いつも明るく、楽天的で、能天気。 そういう姿しか見たことがなかったので、余計に胸が痛んだ。 騙すこと。 偽ること。 辛くなかったワケがない。 表面的には、そう。 傷つける事が怖かった。 けれどきっと、本心では違ったのだろう。 嫌われる事が嫌だった。 けれど現実はどうだったのか。 泣かれるなんて、思ってもみなくて。 怒鳴られ、なじり、拒絶された方が、どんなに楽だったのか。 辛かった。 彼女の涙も、悲痛な声も。 懇願する声が。 「嘘って、言ってよ……ねえ」 辛かった。 自分でも自覚していた、表に出してはいけないと自制していた気持ちが。 それに拍車を掛ける。 せめて、本当に事を言おうと思った。 だけど、無理だった。 それは何よりも彼女を傷つける事だと思ったから。 せめて「嘘だ」と、そう言ってしまえたらどんなに楽なのか。 そう言って微笑みかけてやれば、彼女は笑ってくれると思う。 だけど、それは出来ない。 彼女が求めているのは真実で。 だから。 だから俺は黙る事しか出来ない。 真実を告げて傷つけるよりは、嘘を吐いて裏切るよりは。 その時はただ、黙る事が正しいと思えたのだ。 * 真実を知り、どれだけでも俺をなじればいい。 どれだけでも俺を嫌えばいい。 そう思ったのに。 「ソルが悪いんじゃないよ」 彼女はただそう言い、いつもと同じ、太陽を思わせる明るい笑顔を見せるだけだった。 「たまたま、オルドレイクの子供に生まれただけ。あたしと同じだよ」 ああ。 彼女は何故こうも素直に笑えるのだろう。 何故俺を責めないのだろうか。 * いつもいつもいつも。 彼女に救われてきた。 だから、今度は、 「俺がお前を守ってみせる」 俺の番だ。 俺がナツミを守る。 * 空にはぽっかりと大きな月が浮かんでいる。 あの時と同じ。 いつも俺たちの上にあったもの。 ナツミが笑ってくれる。 それがとても嬉しかった。 |